注意欠如・多動症とは

元気な子どものイメージ写真

注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意、多動性、衝動性の3症状を主な特徴とする発達障害の一つの疾患です。
脳機能の発達に何らかのアンバランスがあることで、脳内の神経伝達物質(ドパミン、ノルアドレナリン)の作用が十分ではなく、行動コントロールがうまくとれないと考えられています。
また、このような行動特性は様々な環境因子からも影響を受けるといわれています。

ADHDのある子では、特徴的な行動が年齢不相応に見られ、生活の必要レベルに見合った自己行動コントロールすることができません。その結果、学校の決まりどおりに行動できない、学習の遅れがでる、周囲の人とトラブルが多いなど家庭や学校での生活に支障をきたすようになります。
これらの行動により、注意されることが増え、失敗ばかりになると子どもは自信が持てなくなりやる気を失ってくる可能性があります。
ADHDからくる行動特性として捉えられなければ、原因は「本人の努力不足」「親のしつけが足りない」「わがまま」からだと誤解を受けて、本人や家族が追い詰められてしまうかもしれません。

多動や集中困難といった症状は、しばしば集団生活の中でより目立ち、学校等の先生が気づいて、保護者に話してくれることがあります。
家庭では、あまり困り感が感じられなくても、学校からの指摘も大切な「気づき」のタイミングです。
保護者は、学校等での子どもの状況を丁寧に聞いて、心配と思えば、医療機関等に早めに相談・受診しましょう。
子どもの生活上のつまずきが少しでも浅いときに対応してあげれば、望ましい成長の方向に進め易くなるからです。

ADHDの主な症状

不注意の主な症状

  • 一つの事柄に集中できず、すぐに飽きてしまう
  • 周りの刺激に反応しやすく、すぐに気が逸れてしまう
  • 人の話を聞いていないように見受けられる
  • 大切なもの、必要なものをよくなくす
  • 学校の勉強などで不注意なミスが多い
  • 宿題や課題などを忘れることが多い
  • 計画的に物事を進めることが難しい など

多動性の主な症状

  • 急に走り出す
  • 一方的に喋ってしまう、喋りだすと止まらない
  • 授業中に席をはなれる、教室から出て行く
  • 手足をそわそわ動かしている
  • 夢中になりすぎて周囲の出来事が見えなくなる など

衝動性の主な症状

  • 考えるよりも先に動く
  • 順番を待つことが困難
  • 他の人が行っていることの邪魔をする
  • 人が話している途中で話を遮る
  • 感情のコントロールが難しい など

ADHDの治療法

ADHD治療は、第一に心理社会的支援で、第二に薬物療法を併用することで、症状の軽減を図ることができます。

心理社会的治療・支援

  • まず、診断を受け止め、正しく理解することです。子どもがいろいろできていないことや集団生活での問題行動は脳機能の偏りが原因であり、本人に繰り返し注意して改善を求めるのではなく、特性に応じて気長な教育的支援が必要であると、周囲の大人が見方を変える必要があります。
  • 環境調整:集中しやすいような工夫。スモールステップ。子どもの学習理解のレベルに合わせた内容と量。達成感がえられるような評価法。
  • 特別支援教育体制の検討(通級、特別支援学級)
  • 社会的スキルを指導する支援
  • 家族支援:ペアレント・トレーニング等

薬物療法

  • 6歳以上に使える薬が、4種類保険適応になっています。徐放性メチルフェニデート(商品名:コンサータ)、アトモキセチン、グアンファシン(商品名:インチュニブ)、リスデキサンフェタミン(商品名:ビバンセ)です。それぞれの薬の特徴により、困っている症状に応じて選択されます。ADHD に伴う他の疾患への影響も考慮します。
  • 薬物療法の目的は、本人の困る症状を減らすことです。自分で行動コントロールができるようになり、成功体験が増え、自信がついていくように周りの大人も引き続き働きかけましょう。
  • 薬の効果判定のためには、家庭や学校での子どもの行動の変化を丁寧に観察して、診察の時にお話いただくことが大切です。保護者の方は、できる限り、担任の先生と良い協力関係を保ち、学校での子どもの具体的な学習や行動の変化と、関連する事柄を聞き易い様になれば安心です。また、ADHD-RS等の行動評価(家庭、学校)を定期的に実施して、長期的な評価の参考にします。
  • 薬物療法が必要な時には、早めに内服を開始し、症状が軽減したら(年の単位になることが多いですが、)中止するタイミングを図ります。薬の開始と終了は、一人一人異なります。子どもが思春期になれば、本人の考えも聞いて、主治医とよく相談しましょう。
  • それぞれの薬において、たとえば、食欲、成長への影響、不眠、眠気、血圧等、注意が必要な点があります。心配なことがあれば、診察時になんでも話しましょう。

将来に向けて

  • ADHDのある子は、小学校低学年頃までは、多動が目立ち、人の話もよくきいておらず、何度言っても大人がやってほしいことをやらずに、目が離せず、手がかるかもしれません。
  • 情緒的には、年齢よりも少し幼く、甘えん坊なところがあります。好きなことをするのに忙しくて、身の回りの支度とか段取りには無頓着な子もいます。「今」を生きている感じです。
  • 性格的には、素直で、さっぱりとして、人なつこく、優しい面があります。
  • 勉強などもわかってしまえば、それ以上こつこつ繰り返し努力するとか、ミスを減らしてよりよい点をとるとかには関心が向きません。逆に、難しくてわからなければ、簡単に諦めてしまう子もいます。
  • 小学校くらいまでは、みんなと同じにきちんと行動することに完璧を求めず、好奇心を発揮して、創造力を高め、何でもチャレンジすることを良い面として、緩く見守って行くことはできるでしょうか?
  • 身の回りのことも、なかなか関心が向きませんので、当分の間(かなり大きくなっても)、学校で困らないように、手助けしてあげましょう。
  • 保護者は、子どもが中学・高校に行くようになるまで、部分的に手助けして、あまり厳しく叱りすぎずに、大器晩成と思って、辛抱強く、本人がやる気になるまで待てるでしょうか? 子どもの心が傷つかないように味方になれるでしょうか?
  • 中学生以上になると、多動が減って、学習や部活に頑張るようになります。必要に迫られて、持ち物の準備をし、約束を守る努力をするようになります。中学・高校で、自ら目標を持ち、持ち前の「好きなことには集中する力」を発揮して、個性的な能力を生かしていく、子どものそんな姿を目標に描いて長い目で見て、応援していくことはできるでしょうか?
  • 環境調整や薬物療法を始めても、なかなか行動の改善が難しい子どももいます。ADHD特性ばかりでなく、他の原因がないか丁寧に見直してみましょう。例えば、本人にとって勉強がだんだん難しくなっていないか?学習の個別対応が必要か? 家庭や学校で本人が不安に感じるような生活の変化や人間関係がないか? 社会的環境はなかなかすぐには変えられことも多いですが、それでも、子ども中心に考え、子どもの気持ちが少しでも落ち着くように、楽しいことが見つかるように、気長に対応しましょう。