ごあいさつ

近い未来と遠い将来

院長 医学博士 小黒 範子

2021年、新しい年が始まりました。
1年間、1ヶ月、1日と、朝になり、昼間は学校や職場あるいは家で生活・活動をして、夜が来る。時間の流れそのものはずっと変わりませんが、その中身や人々の心の内は、外からの影響で大きく揺さぶられています。

クリニックの診察に訪れる子どもたちが開く(あるいはなかなか開かない)心の窓を覗いてみると、世の中全体の不安の渦に巻き込まれて、じっと小さくなって、手足を伸ばせないでいる姿が見えます。小・中学校の1年生、以前なら春からゆっくり新しい環境に慣れていく時間がありましたが、昨年はどれほど大変だったことでしょう。心身共に落ち着けずに、困っている子が多く受診しました。多動な行動の中に、不安が隠れています。学校に行く楽しみを見つけられない子もいます。

1~3歳の小さな子どもたちも、とても不安そうなお母さんと一緒に受診されます。健診で「様子を見ましょう」となっても、親子支援や相談の場所にも行きにくい、遊びの場所も限られている状況です。マスクが欠かせない今は、表情に乗せて、気持ちを子どもたちに伝える事がとても難しいです。いろいろな大人と会話する機会が減っているので、言葉の発達も心配です。お家でどうしてもスマホに頼ってしまう時間も多いことでしょう。

近い未来、今年1年、とにかくできる感染症対策を続けて、新しい形での安心の生活を作り、子どもたちが心身共に健康で外に明るい気持ちを向けることができるようにすること。

遠い将来に向けての視点を忘れてはいけません。どんな社会状況であっても、子どもたちは常に成長する存在です。その発達段階に応じて、「今」に学び、生活力を身につける必要があります。子どもが困っていれば、大人が様々な立場(家庭、保育、学校と病院等)から、助け船を出して、心と体の健康を守ってあげること。

当院では、診断・治療の目的は、子どもたちの将来の自立をイメージして、育ちの支援をすることです。私たちは、湖の白鳥のように水面下では足を必死に動かすが、子どもたちに向きあうときには、優しい笑顔と明るい声を心がけています。イチゴちゃんのクリニックでは子どもが安心して、お話しして体を動かして、少しでも元気な気持ちになって、また、次に会えるようにといつも願っています。

まだ始動して1年生の新米クリニックですが、医療機関として安心・安全とのバランスを図りながら、困っている子どもたちに対して、今、何をしてあげられるか考えながら、職員一同よりよい診療に努めて参ります。

2021年1月
とちぎっ子発達クリニック
院長 医学博士 小黒 範子

経歴

  • 旭川医科大学医学部医学科卒業
  • 自治医科大学小児科学教室
    (茨城県立中央病院小児科、福田記念病院小児科等派遣)
  • 都立よつぎ療育園
  • 栃木県立リハビリテーションセンター小児科
    (栃木県立身体障害医療福祉センター、とちぎリハビリテーションセンターから組織改編)
  • 2019年11月 とちぎっ子発達クリニック 開業

専門医・認定医

  • 日本小児科学会専門医
  • 日本小児神経学会専門医
  • 臨床遺伝専門医
  • 日本小児精神神経学会認定医
  • 子どものこころ専門医

所属学会

  • 日本小児科学会
  • 日本小児神経学会
  • 日本小児精神神経学会
  • 日本児童青年精神医学会
  • 日本人類遺伝学会